ここ数日で読んだ5冊

 「想像ラジオ」

想像ラジオ

想像ラジオ

 杉の木の上に宙づりにされた主人公がDJとなって始めるラジオ番組。リスナーからのお便りなどにより、震災の被害者の声を軽妙な口調で語るDJ。死者による死者のためのラジオ番組。それを想像することで、死者から生者に、生者から死者に声が届く。
 震災後に日本列島のすべての生者を覆った「後ろめたさ」の波は、死者のラジオを想像することでやっと解消されるのだ。
 番組で流される音楽の選曲センスも素晴らしいね。
 
 「ラジオのこちら側で」
ラジオのこちら側で (岩波新書)

ラジオのこちら側で (岩波新書)

 ピーター・バラカンが自分史を語ることで、日本の音楽(業界)史を語る。自由に選曲させてもらえない鬱憤など、いちいち興味深い。
 ラジオというメディアに悲観的でありながら、ラジオに魔法を取り戻したい熱意。読んでるとラジオを聴きたくてたまらなくなってくる。
 
 「ラジオのこころ」
ラジオのこころ (文春新書)

ラジオのこころ (文春新書)

 TBSのラジオ番組「小沢昭一的こころ」からのベストセレクション。活字から語り口が聞こえてくるような文章が素晴らしい。
 宮坂さんをもう聴けないと思うと寂しいね。もっとラジオ聴いときゃよかった。
 
 「クラウド・アトラス 下」
クラウド・アトラス 下

クラウド・アトラス 下

 上巻とは逆に未来から過去へと辿ることで、人類の愚かさと滅びへの必然性を描きつつも、そして過去を描いた最後の章では逆に希望が語られる。
 時代を超えた6つの物語がどう交錯するのか楽しみにしていたが、連関のつなぎ目が見える程度であり、カタルシス的な面白さは味わえず。まぁこれはこれで好いか。
 大長編だが最後まで放棄しない程度の面白さ、というのが正直な感想。
 
 「アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う」
アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う (英国パラソル奇譚)

アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う (英国パラソル奇譚)

 吸血鬼や人狼が人類と共存する19世紀のロンドンを舞台に、なんて設定の冒険譚。「新世紀のスティーム・パンク」という謳い文句には??、というかSF要素はかなり薄く、ファンタジー活劇という感であります。
 ティーン向けな文体と内容でありながら、主人公のラヴロマンスが始まるといきなり直接的な性行為の描写が・・・。しかし面白い。