第18回セレクト合戦 勝手にレビュー cytronさん編

 音楽好きの皆さん、音楽好きでなさそうな誰かに「どんな音楽を聴いてるの?」と訊かれたら、どう答えてますか?
 どうせ分かってもらえないと思って、適当に返してるんじゃないでしょうか。
 
 僕は普通に勤め人をしているのですが、以前にいた部署にて、たまたま隣席の人がタワレコの袋を持ってたので上の質問をしてみたところ、「ぇぇと、ヴァージニア・アストレイとか・・・」と返答。
 そこから話がはずみ、お互いが相当な音楽好きな人であることが判明しました。
 
 面倒がらずに、コアな答えをぶつけてみるのも大事なのかも、などと思っていたことを、ヴァージニア・アストレイを聴きながら思い出しました。
 
 さて、本日はcytronさんのセレクト感想です。
 cytronさんも今回初めて参加される方なんですが、「pizzicato file」というブログを書かれているとのこと。そんな事とはつゆ知らず、ピチカートの曲を1曲入れてしまっていました。なんだかちょっと気恥ずかしい感じがします。
 
 さて、本題。
 cytronさんのセレクトですが、なんというか、1枚の盤として、非常に完成度の高いセレクトでした。
 収録されてるジャンルは結構幅広いのですが、世界観がしっかりしていて、12曲トータルで1作品という感じ。
 その世界はなんとも円やかで、じんわりほのかに温まるよう。
 ご本人の解説によると、すべてアナログ盤からの録音で、プチ・ノイズは「薪の燃える音」ですって。これまた心憎い演出ですね。
 
 収録されている曲目は、
 01. 忘却の歌 / Geraldo Vespar
 02. Sun Down / Lani Hall
 03. Friends / Buzzy Linhart
 04. Crying In The Sunshine / Mark Moogy Klingman
 05. Cold Morning Light / Todd Rundgren
 06. Over / Alpha
 07. エリントン1941 / Yves Montand
 08. Sunny Skies / Bobby Scott
 09. The End Of Time / Virginia Astley
 10. We've Only Just Begun / Johnny Hartman
 11. Close To You / Dells
 12. 窓に明かりがともる時 / 赤い鳥
 
 曲目ごとの感想です。
 (01) は、ブラジルのガット・ギタリストといえばこの人も忘れちゃいけません、と言われながらも、実はソロ作品を聴いたことがありませんでした。ギターで紡ぐ音ひと粒ひと粒の、丸みや暖かみが絶妙です。
 (02) は、実は僕も大好きな曲。セルメン&'66の魅力はラニ・ホールの歌声に依るところが大きいと思うのですが、残念ながら彼女のソロ作品はどうもパッとしない。そんな中でひときわ輝いているのがコレです。ソフトなアレンジに似つかわしくない、低音で唸り声を繰り返しているベースが素敵。
 (03) は、これはまた素敵なヴァージョンですね、もう欲しくてたまりません。ちょっととぼけた歌声と穏やかなアレンジが最高です。ホーンやヴァイブの音色も円やか。
 (04) は、(03)と同じ耳ざわりな曲なんですが、(03)の共作者とのこと。後半の音が入り乱れてくる盛り上がり部でも、やっぱり味わいは穏やかですねー。
 (05) は、結構エクスペリメンタルにコロコロと姿を変えているのに、曲自体はメロウで優しく聴こえる。ポップ職人の魔法を見せつけられる逸品ですね。
 (06) は、いきなりフォーキーなラウンジ・エレクトロニカ系の曲に。でも流れに違和感がなくて、更にほっこりと小休止という感じ。この曲は激しく聴き覚えがあるのですが、どこで聴いてたのかなぁ。
 (07) は、突然の渋い低音ヴォーカルにびっくりしましたが、前曲とのつなぎがお見事!
 (08) は、続いて低音ヴォーカル。その歌声もさることながら、エレピやストリングスの柔らかなアレンジと女性コーラスが素敵ですね。
 (09) は、ここでしんみりと。真冬に暖かい部屋の窓から、湖を眺めているようなイメージ。cytronさんの解説に「後に出されたシングルに」と書かれていますが、日本盤7インチですか? もしかして持ってるような気もします。
 (10) は、そしてまたヴォーカルものに。ちょっぴり寒い前半から、ホーンが入りだして暖まっていく展開がまたいいですね。
 (11) は、こりゃもう言うまでもなくコーラス・ワークが素敵なソウル・グループですが、「パパパー」あたりの微妙にずらして人力エフェクトな効果を産んでるコーラスに参りました。
 (12) は、数多くの和製ソフロ歌謡を手掛けた山上路夫村井邦彦コンビによる楽曲。木漏れ日ソフト・ロッキンなイントロからラスト近くのゾクゾクするようなコーラスまで、穏やかながら落ち着いて聴けない曲でした。これまたベースがカッコ良いですね。
 
 ちなみに手持ちは(02)(05)、特にお気に入りは(03)です。
 
 赤い鳥はジャケも素敵で好きです。
   
 
 ↓cytronさん本人の解説はこちら
 http://d.hatena.ne.jp/cytoron3/20080121