本日の1枚 Lamp

 Lamp / ランプ幻想 (CD)

ランプ幻想

ランプ幻想

 
 前作「木洩れ陽通りにて」から3年半ぶりの新作。
 正直言うと、まず初めに聴いたときはちょっとガッカリしました。何かが足りない気がして。
 もうちょっとアップテンポな曲が欲しいなぁ、てことなんだと自分で思って聴いてたんですけど、聴き込むうちに、その「何か」が別なものであるような気がしてきました。
 変な言い方ですけど、自分に足りない何かを気づかせてくれるようなアルバムなのかなぁって感じです。
 タイトルどおり、全体的にちょっとボンヤリした幻想的な雰囲気があるんですけど、心地良さと同時に、迷い込んでしまうことによる焦燥感みたいなものを強く感じるのです。
 
 薄く揺らめくように始まるオープニングの『儚き春の一幕』から、流麗だがまどろむようなアレンジの『密やかに』への流れとか、曲ごとのクオリティの高さと同時に、アルバム・トータルとしての流れの美しさが素晴らしいですね。
 エレピのメロウさがたまらないシティ・ポップな『雨降る夜の向こう』、ちょっとクセのある榊原香保里の歌声が一番はまってる『ゆめうつつ』の2連発がお気に入りです。
 昭和のシティ・ポップ感な『白昼夢』、ちょっぴりエキゾな味わいのある不思議なメロウ感がたまらない『日本少年の夏』、同じく和風エキゾ・テイストなボッサ・ポップ『二十歳の恋』の流れもいいですね。このへんは和ものシティ・ポップ好きにもたまんないでしょうね。
 普通に胸キュンなバラード『冬の影は哀しみ』を挟み、軽やかに弾むピアノもノスタルジックさに溺れる『ヱンド・オブ・ア・ホリデヰ』、陽炎のようなラスト『ア・サマア・バケイション』までの流れもまた素敵。
 
 前述のようにお気に入りなのは『雨降る夜の向こう』と『ゆめうつつ』の2曲なんですけど、もう1度聴こうとするときに、つい1曲目からまた全曲聴いてしまうような素晴らしいアルバムです。
 
 知人たちも大絶賛のアルバムなので、あえて苦言を呈するとすれば、榊原香保里の歌声が曲のアレンジに合わず、ちょっと浮いてるような印象を受けてしまいました。特に前半。
 ぼわーんとした温もりのある曲よりも、寒々しい中にほんのり温もりがあるようなもののほうが、彼女の声質がぴったりとはまるように思います。
 
 と言いつつも、1音1音に対するこだわりがひしひしと伝わってくるような、すっごくクオリティの高いアルバムですので、ぜひ多くの方に聴いて欲しいですね。
 
 
 Lamp / 雨降る夜の向こう