本日の1本 ゾンビーノ

 ゾンビーノ

 
 ゾンビが大量発生した世界。ゾンビとの戦いの果て、ゾムコン社はゾンビを飼い馴らす首輪を開発する。そして、首輪をはめたゾンビを使用人と有効活用できる時代が訪れたのだ。さて、平和な田舎町の少年ティミーは、母の勧めで飼い始めたゾンビをファイドと名付け、徐々に友情を育んでいたのだが、ある日、首輪の外れたファイドが隣人のお婆ちゃんを食べてしまい、、、というストーリーです。
 
 キュートなゾンビ・コメディ。
 というキャッチフレーズどおり、ほのぼのとしたトーンでストーリーは進んでいきます。なので、あんまりショッキングなシーンは少ない。ゾンビが街に溢れ、生き残りをかけて人々が戦い、逃げまどうといったゾンビ映画王道の展開も無い。
 じゃあ、ゾンビ映画としての魅力も少ないかといえばそうではなく、ゾンビ映画を貫く根本思想はしっかり受け継がれているのです。
 
 これカナダ映画なんですけど、基本スタイルは米国のホームドラマ風なんですよ。50年代米国風の平和な郊外が舞台となってるのですが、その社会はゾムコン社に細部まで管理されており、学校ではゾムコンと自国軍人の栄誉を讃える思想がたたきこまれる。そう、ゾンビを抜きにすれば米国そのものを風刺しているのですね。
 ゾンビを殺して良心の呵責を感じるようであれば、逆に社会からつまはじきに合う。
 ほのぼのとしたホーム・コメディの内部には、ロメロのゾンビ映画を貫く皮肉めいた反骨精神がしっかり受け継がれているのですよ。
 
 また、映像そのものも穏やかなんですけど、実際にそこで描かれてることはとんでもないんですよ。
 子供が子供を打ち殺したり、ゾンビ化した子供を焼いて始末したり。
 
 
 ファイドに食べられて死んじゃった隣のお婆さん。
 
  
 おとぎ話風の映像だが、主人公の少年がゾンビ化したお婆さんを撲殺するシーンである。そして転がる生首、いいね!
 
 生き物としての魅力をかきたてるゾンビの演出も見事でした。ファイドのおどおどした動作と、ふとした拍子に煙草に手を伸ばす人間臭さとか。
 
 
 一番魅力的だったのは、やっぱ近所の変人と愛を育む美人ゾンビですけどね。
 
 実はこの作品を観るのは2回目なんですけど、以前観たときに感じた(スプラッタ的な)物足りなさを十分に補える魅力を発見したような気になりました。
 それでも『ショーン・オブ・ザ・デッド』にはまだまだ及ばないですけどね。