本日の1枚 寺尾紗穂

 寺尾紗穂 / 愛の秘密 (CD)

愛の秘密

愛の秘密

 
 今年4月にリリースされた4枚目のアルバム。
 「御身」からファンになったんですけど、「ピアノは矢野顕子、声は吉田美奈子、歌い方は大貫妙子」なんてこれまでのキャッチフレーズはすっかり不要。もう寺尾紗穂の世界が確立されていますね。顔ジャケは自身の現われか。
 もちろん大貫妙子なんかの影響色濃い楽曲が多いんですけど、でももっと涼しい印象ですね。クールって意味じゃなくて、穏やかながら凛とした佇まいを感じます。
 
 どこか微妙にノスタルジックなサウンドは伝統楽器などを使用している所為か。SAKEROCKの人などが参加しているらしく、それほど音数は多くないのに、芳醇で豊かに響く演奏が素晴らしい。
 そんなパステルカラーな色彩の演奏に、涼やかな彼女の歌声が陰影をつけていくようで、とにかく美しい輝きを放っています。
 そして音と音、言葉と言葉に挟まれる無音の圧力、存在感の素晴らしさが、彼女の表現の豊かさを物語っているように思えます。
 
 冒頭の『お天気雨』からピアノの躍動感が素敵ですが、続く『口の角』でのグルーヴィに跳ねるピアノと独特な伸び方の歌声に胸キュンです。
 『ハイビスカスティー』のキャッチーなメロディを口ずさんだり、穏やかにメロウな『月の海』の揺らめきにうっとりしたり、『狂女』ってタイトルにも歌声にもビビったり、『愛の秘密』のフルートなどの楽器のアレンジにグッときたり。
 特にお気に入りは、ボッサなリズムの『午睡』。寂寥感がにじみ出る歌声と、無音部分の発するピリピリした空気感にゾクゾクきます。
 
 
 お天気雨