本日の1冊 クォンタム・ファミリーズ
- 作者: 東浩紀
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2009/12/18
- メディア: 単行本
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○○かもしれない並行世界を辿る、なんて設定は、年末に子供と観ていたウルトラマンや仮面ライダーのそれと同じだったりするが、でも僕にとっては逆にそのシンクロが妙にリアルさを増しました。
読後感としては、苦しい、のひと言。いわゆる35歳問題とか、胸に突き刺さる「痛み」がとにかく苦しい。これでもかと様々な個人的、社会的な病理が綴られるが、どれもリアルに苦しい。
そう、まずは普通に小説としてとても面白いよ、と言うべきか。
もちろん、批評家としてのこれまでの言説が散りばめられています。村上春樹をはじめとして、引用もとても多い。それが必要最小限、というかあくまでも断片的に語られるところが興味深いですね。「亡霊」のように立ち現われては消える。
読んでいて気がつけば、頭の中が亡霊だらけになっちゃいますね。
ところで、最後の「物語外2」が無いほうがいいのでは、とある知人が言っていました。この物語にはバッドエンディングが相応しいということでしょうか。
でも、このエンディングがなければ虚構が重層化するようなこの余韻は残らないでしょう。だいたい、往人の死で完結してしまえば、「手紙は必ず宛先に届く」ことになっちゃいますよ。
そして、ラストの言葉が僕には極めて重要に思えます。
「ゲームをプレイし続けるためにこそ、虚構の世界で生き続けるためにこそ、ぼくたちはつねにリセットボタンに手をかけておかなければならない。再起動ができないゲームに意味はない。」
こんなリアルに響く言葉は聞いたことがないよ。ゼロ年代最後を飾るにふさわしいエンディングではありませんか。