本日の1枚 ポータブル・ロック

 ポータブル・ロック / ビギニングス (CD)

ビギニングス+5

ビギニングス+5

 
 野宮真貴をヴォーカルにフィーチャーしたテクノ・ポップ・ユニット、ポータブル・ロックが、デビュー前の1983年に録音した未発表曲集。僕が持ってるのは1990年にリリースされたCDなんですけど、今月、チャクラの2枚のアルバムと再発と同時に、この盤もボートラ5曲付きで再発されました。
 正式リリースされた2枚のアルバムに比べると、「テクノ・ポップ」よりもむしろ「ニュー・ウェーヴ」という言葉がしっくりくるように思えます。
 某レコ屋の謳い文句では「トニー・マンスフィールド meets オレンジ・ジュース」なんて書かれてましたが、確かに、というかモロに New Musik な音でありますなぁ。また、キラキラなギターとかはオレンジ・ジュースという例えに納得してしまいました。
 
 シンセなどのアレンジは非常に凝ってはいるものの、デモ音源のせいなのか全体に「ぼわーん」とした空気に包まれています。しかし、そのぼわーんとした柔らかさや浮遊感が希有な世界観を醸し出しているのです。まさに「水族館」な雰囲気。
 そして今もキュートな野宮真貴さんの歌声は、ピチカート時代と同一人物とは思えない無邪気なキュートさに溢れていて、その瑞々しさはいい意味で歌謡ポップしています。
 例えばラストの『アイドル』はファースト・アルバム「QT」にも収録されていますが、こっちのバージョンのほうが圧倒的に「キュート」なんですよ。
 一番好きだったのはその『アイドル』なんですけど、キラキラ感と浮遊感が素敵な『天体観測』、ぶ厚い音にも関わらず木漏れ日な雰囲気の『冬の葡萄畑』、ブヨブヨしたシンセのグルーヴィさがキュートな音に覆われる『自動車レース』、アンビエント・ポップ先取りな『真珠海岸』とか、今聴いてもどの曲も魅力的に思えます。
 
 1990年版のサエキけんぞうさんの解説も素敵ですが、今回の再発では田中雄二さんによるメンバー鼎談なども凄そうです。
 ボートラの5曲(特に『空飛ぶセーラーマン』)も気になるし、またついつい買ってしまいそうであります。
 
 
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