本日の1枚 The Boats

 The Boats / The Ballad Of The Eagle (CD)
 
 
 何度かチャレンジしたけれど、1回も最後まで観たことのない映画があります。タルコフスキー「鏡」。優美なカメラワークに魅せられつつも、でもなぜか途中で観ることを放棄してしまうのです。
 ボーツの新作を聴いて、その「鏡」のようなアルバムだと思ったのです。
 
 霞がかかったように不透明で、かつ幻想的な美しさに包まれたトラックに、チェロなどの音色を配してロマンチックな雰囲気が漂います。
 流麗な寂寥感に覆われたドローンとした微睡みサウンドが、「鏡」の映像みたいな世界観だなぁと。眠くなることも含めて。
 
 冒頭の『Invisble Orchestra』から、ダウナーなモノクロ風景に光が差し込んでくるような音世界がとても映像的であります。
 ぼわーんとしたドリーミーな音の中をウィスパー・ヴォイスが漂う『Omissions For Your To Fill In』とか、アコースティックな楽器の音色とエレクトニクスな感性との交錯も懐かしげな『Great Intentions』とか、とても好いとは思うんだけど、やはりなぜか最後まで聴けない。いや、実際には最後まで聴いてるんだけど、耳がいつの間にか他の方向に向いているような感じで。
 
 お気に入りは、じわーんと響くラジオノイズにグリッチな音でリズムが刻まれる『Chance Meetings At Train Stations』。
 静かに鳴り響く電子音もキュートで、まぁわかりやすいポップさに惹かれているんわけですけど。