本日の1枚 ムーンライダーズ

 ムーンライダーズ / ciao! (CD)

Ciao!

Ciao!

 
 さて、ちょいと今さらな感もありますが、活動停止前にリリースしたこのアルバムであります。各メンバーが持ち寄った曲で構成されているそうですが、とりあえず前作「Tokyo 7」との落差に驚かされますね。
 まずは冒頭『who’s gonna be reborn first?』の、ポスト・パンク的な混沌とした雰囲気にため息。しかしその混沌とした演奏がギリギリに一体感を保っていて、このアルバムそのものを象徴しているかのように思えました。あと、歌声のハマり方ではこの曲が一番好きです。
 これともう1曲『Masque-Rider』は白井良明氏の曲なんですが、そっちのほうも不穏な空気で始まる雰囲気は同様。しかし、『Masque-Rider』てタイトルがまた好いなぁ。
 
 武川雅寛氏の『無垢なままで』と『弱気な不良 Part-2』はオリエンタルな美しさが余韻に残る曲。後者はシューゲイザー的な味わいもあるし。
 鈴木慶一氏の『ハロー マーニャ小母さん』と『主なくとも 梅は咲く ならば』は奥深いユーモラスさを音に感じる曲で、後者の軽やかなグルーヴィさがやたらとカッコいい。
 グルーヴィさではかしぶち哲郎氏の『ラスト・ファンファーレ』が凄い。押し寄せる音の波、いや渦に呑み込まれそうになります。そして、かしぶち氏のもう1曲『Pain Rain』は泣かせます。
 鈴木博文氏の『オカシな救済』もファニーだけど泣かせるなぁ。そして、バラバラにも聴こえる音の配置から生まれる奇跡的な浮遊感が素敵で、このアルバムでの一番のお気に入りの曲なんです。もう1曲の『折れた矢』は、冒頭の電子音などエレクトロニクスな要素が印象的。
 岡田徹氏の『.Mt.,Kx』はメロディもキャッチーでとてもポップなんだけど、アルバム中で最もカオスな匂いを感じる曲でした。そして、ラストの『蒸気でできたプレイグランド劇場で』。何だかよく分からないけど前に進んでいくんだよな、と思いました。
 
 と、1曲ずつ聴きながらメモっていたものを書いてみたんだけど、どの曲もはやはりムーンライダーズな曲であるし、曲単体でもアルバムトータルでも、渾然とはしているがムーンライダーズな一体感があります。
 メンバーがそれぞれ個性を出しながらもグループとして1つに、などとありきたりな言葉で表現されることを真に実現できた稀有なバンドだ、と改めて痛感したアルバムでした。