本日の1枚 The Beach Boys

 The Beach Boys / That's Why God Made The Radio (CD)

THAT'S WHY GOD MADE THE R

THAT'S WHY GOD MADE THE R

 
 大学生のあるときまで、ビーチ・ボーイズは自分の聴きたい音楽リストには全く載っていなかった。彼らのパブリック・イメージといえば、「サーフィン、海、女の子」。どれも僕の苦手なものなので、聴く前から嫌悪してしまっていたのであります。
 しかし、サークルの先輩が部室でかけていたサイキックTVの『Good Vibration』カヴァーを聴いて、一気に興味がわき出してきました。なので、僕が最初に購入したアルバムは「Smiley Smile」であります。
 また、ソフト・ロックが流行り出した時期に、「Pet Sounds」が妙に神格化されてましたが、実は僕もまた同アルバムに強烈に惹かれたのでした。
 などと個人的なビーチ・ボーイズ史を書いてしまったのは、このアルバムを聴いた印象が、どうも前述の2枚と被っちゃうからなのです。
 昨年の「Smile Sessions」とこの新作が、「Smiley Smile」と「Pet Sounds」の組み合わせと同種に感覚的に思えるのです。もしかして、わざと? と勘ぐってみたり。
 
 さて、まさかの新作は、結成50周年を記念したプロジェクトから生まれたそうで。現存メンバーが終結したとは聞いていましたが、参加者にはなんとデヴィッド・マークスの名前までありました。
 そして、やはりまぁブライアン前面な印象ではありますが、他のメンバーの持ち味もしっかり出てます。特にマイク・ラヴの甘い低音ヴォイスがちゃんと効いていて、うーむ、これはビーチ・ボーイスのアルバムですよ。
 
 冒頭のアカペラから2曲目のタイトル曲に続く、重厚なコーラスが織り成す甘美にユルさがいきなり感動的です。こんな風にしたらファンは喜ぶだろう、みたいな狙いを感じないでもないですが、でも実際に喜んじゃいますよ、やっぱり。
 『Isn't It Time』は、シンプルめだけどグルーヴ感が素晴らしい。そのグルーヴィさを生み出しているのは、まぎれもなくマイク・ラヴの声であります。
 微妙なモンド感も軽やかな『The Private Life Of Bill And Sue』、どどーんと重厚なコーラスが押し寄せる『Strange World』とか、どれもやっぱビーチ・ボーイズだなぁ。当たり前だけど。
 
 僕のお気に入りは、ちょっと間の抜けたスカスカ感が素敵な『Beaches In Mind』と、穏やか柔かな浮遊感たっぷりな『From There To Back Again』。
 特に後者は、いわゆるブライアン・チルドレンなグループたちが奏でてるサウンドを聴いてるような、なんだか不思議な気分を味わっております。
 
 
 From There To Back Again