本日の1枚 坂本真綾

 坂本真綾 / Driving in the silence (CD)

Driving in the silence

Driving in the silence

 
 昨年11月にリリースされた、「冬」をテーマにしたコンセプト・アルバム。彼女の場合、どうしても菅野作品からイメージを切り替えにくいところがありますが、正直このアルバムを初めて聴いたときも、菅野作品っぽいなとか、ここが違うなとか、ついそんなことを考えてしまいました。しばらく時間を置いて、やっと違う目線で聴けるようになったと思います。
 多彩な作家陣を迎え、全体のアレンジとプロデュースは河野伸。その作家陣の得意技も見せつつ、基本的には綺麗めなシティ・ポップとしてまとまっていて、歌声がすっと前から上に浮き上がるような印象のアルバムです。
 
 オープニングの『Driving in the silence』は、とにかく透き通った歌声と音が美しい。そして、その歌声がとってもキュートなのです。
 続く『Sayonara Santa』は、スウェーデンラスマス・フェイバーの作品。なるほどスウェディッシュな爽やかでグルーヴィなポップさが心地良い。「パパパー」なコーラスに胸キュンであります。
 同じくラスマス・フェイバーの『Melt the snow in me』は、北欧エレクトロニカ・ポップ的な美しさで。このうっすらと寒い感覚が素敵だなぁ。
 江口亮の『homemade christmas』は、タイトルどおりのパーティ・チューン。ちょいとエレクトロ・ファンクな音に、穏やかな歌声がまた味わい深い。
 
 永野亮の『今年いちばん』は、ウッドベースがどーんと響くジャジーなアレンジ。寒い日に暖かい部屋で聴く「冬のボッサ」な印象です。曲調は全然ボッサじゃないんですけど。
 同じく永野亮の『たとえばリンゴが手に落ちるように』は、アコギの刻みだけでも静かなファンキーさを感じます。ちょいとゴージャスな弦楽器が入っても、なぜかちょっとコミカルな印象も。
 またもスマス・フェイバーの『極夜』は、壮大に展開していくプログレッシヴな曲で、合間に漂うプヨプヨした電子音もまた好し。しかし、こんな曲がアルバムに入ってくること自体に、やっぱり菅野作品の呪縛を感じたりもします。
 そして、坂本真綾の自作曲『誓い』は、ふんわりとした浮遊感と柔らかなグルーヴィさが素敵な逸品。歌声が舞い上がるサビ部分とか、さすがに自分の声の魅力を分かっていらっしゃる。
 
 
 Sayonara Santa