ここ数日で読んだ3冊

 「青い脂」

青い脂

青い脂

 2068年の遺伝子研究所で、トルストイなどの作家クローンから抽出された「青脂」。謎の教団が青脂を強奪、タイムマシンで過去へと送りつけるが、そこはスターリンヒトラーが欧州を支配するパラレルワールドであった。青脂を受け取ったスターリンは、、、。
 旧ソ連に実在した人名が跋扈するハチャメチャな作品。とにかく悪趣味。生理的嫌悪を催させる暴力シーンや拷問の果ての食人など、ただ連続される下劣な場面に唖然。圧巻はスターリンがフルシュチョフが激しく愛し合うホモ・シーンだが。
 これを旧ソ連やあるいはロシア文学への批判と読むべきか、ただのエログロ小説と読むべきか。後者に1票を投じよう。
 
 「京のわる口」
京のわる口 (平凡社ライブラリー)

京のわる口 (平凡社ライブラリー)

 
 文庫で再刊されました。おっとり優しげと誤解されがちな京言葉を「位取り」をキーに読み解く、その鮮やかさにいちいち頷いてしまいます。京都市民以外にどれだけ理解可能か微妙な気もしますが。
 白眉は、「源氏物語」と「枕草子」を現在の京言葉で訳した京ことば談義。ただ単語の分析に終わらず、文化論としてこれまた鮮やかに胸にこたえます。
 
 「禁断の魔術」
禁断の魔術 ガリレオ8

禁断の魔術 ガリレオ8

 
 ガリレオ8作目。物理トリックの妙はすっかり後ろに引いてしまい、人情ミステリな趣がまた強まったような。まぁ面白かったけどね。