本日の1枚 八代亜紀

 八代亜紀 / 夜のアルバム (CD)

夜のアルバム

夜のアルバム

 
 小西康陽がプロデュース、八代亜紀がジャズを歌う。
 音数の少ないシンプルなアレンジは想像どおりでしたが、しかし、想像以上に重い。
 冒頭の『フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン』から、ウッドベースを主体にした演奏が重苦しい。どどーんと重いのではなく、じんわりと覆いかぶさってくるような重さです。
 『ジャニー・ギター』の陰鬱なムーディさも、『私は泣いています』のやたらと重い空気感も、イメージはとにかく真っ黒。
 八代亜紀の歌声は、全然演歌してなくてこれもいい意味で想定外。ジャズ・シンガーとして上手いかと問われればちょっと微妙かもしれないけど、ハスキーな歌声がこのアルバムの世界観にピッタリとハマっています。
 
 『サマータイム』でのヴァイブの軽い音色さえ重く聴こえる濃密な空気、ノスタルジックな雰囲気さえ重い『枯葉』とか、やっぱり重い。
 ねっちょりと重い。
 そのねっちょり感が、鬱陶しくも涙を誘う。
 
 お気に入りは、『五木の子守唄 - いそしぎ』。ボッサ・テイストなアレンジで、この両曲をメドレーでつなぐ感性に参ります。
 そしてラストの『虹の彼方に』。希望の歌にこめられた苦渋に満ちた諦念、みたいな雰囲気に泣きが入ります。
 
 
 フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン