ここ数日で読んだ3冊

 「大阪アースダイバー」

大阪アースダイバー

大阪アースダイバー

 アースダイバーの大阪編。生駒山に死のパワーを感じることから始まり、流れ着いた海民が「都市」を形成していく歴史を幻視する。
 吉本のお笑い芸人にまで結びつく、語られる歴史は荒唐無稽ではあるが、しかし圧倒的に面白いし、その面白さが説得力を生み出す。ご丁寧に欄外に「実は嘘」的な記述があっても、それでも説得力を感じる都市論なのでした。
 
 「珈琲店タレーランの事件簿 
 京都の喫茶店を舞台にした「日常の謎」系ミステリ。珈琲に関する蘊蓄も好いし、バリスタで探偵役のお姉さんと彼女とその珈琲に恋する男性客というキャラも好いよ。
 ミスリードを活かした叙述トリックも、ミステリというより恋物語の展開のキーとして上手く機能しているのでは。
 そして、波乱があっても、結局は「終わりなき日常」に戻ってしまうユルさも心地良いと思えてしまう。
 
 「驚きの介護民俗学
驚きの介護民俗学 (シリーズ ケアをひらく)

驚きの介護民俗学 (シリーズ ケアをひらく)

 
 老人ホームで働く民俗学者が、フィールドワークでの聞き取りの手法を介護現場で実践する。いかに支離滅裂でも語られる言葉どおりに聞く、その中で浮かび上がってくる物語にハッとさせられる。
 とても示唆に富んだ試みに惹かれたんだけど、しかし実際の現場は日常業務で忙しすぎて老人の語りをじっくり聞く時間なんてとれないよ、という嘆きで終わるのが悲しいね。