ここ数日で読んだ4冊

 「あまりにロシア的な。」

あまりにロシア的な。 (文春文庫)

あまりにロシア的な。 (文春文庫)

 ソ連崩壊後、ロシアの地を巡行した留学記。とりあえずロシア文学に無知な僕には知らない人名の嵐で疲れた。だって、古典作家以外で読んだことあるのはソローキンだけなんだもの。
 しかし、そんなことが消し飛ぶほど意表を突かれたのは、この体験記がロシアへの嫌悪と病的な妄想に満ち満ちていること。時系列を無視してコラージュされる記憶と景色から沸き上がる不条理な世界観、これがロシア的なのか。
 
 「傾国子女」
傾国子女

傾国子女

 とりあえず、ヤマザキマリの表紙画が好し。
 男たちを破滅に導く美女が色に溺れる波瀾万丈の人生を描く。例えば堕落する営みの中から聖性が立ち上がるようなリアリティは感じられず、「好色一代女トゥデイ」というよりも「嫌われ松子ライト」という感があり。
 文豪の生き様になぞられる登場人物とか、むちゃくちゃな世界観を突っ走りながら風刺を利かせたストーリーは面白く、一気読みしちゃいましたが。
 
 「踏切趣味」
踏切趣味

踏切趣味

 踏切にまつわるエッセイ。踏切を渡る人物や周囲の景色を淡々と語るだけで、特に蘊蓄がひけらかされるわけでもない。
 とりあえず目につくものを綴るだけ、という感覚が心地良く、また文章も美しいのだけど、正直読後に何も心に残らないね。
 
 「小説・新島八重 新島襄とその妻」
小説・新島八重 新島襄とその妻 (新潮文庫)

小説・新島八重 新島襄とその妻 (新潮文庫)

 壮大な歴史絵巻の前巻「会津おんな戦記」に比すと、なんだか家庭ドラマに落ち着いちゃった感がある。というか、主人公の八重は語り役で、むしろ新島襄の生涯を描いた作品のようだ。
 実直に史実をなぞることで、人間ドラマとしての魅力も失った感もあり。しかし、粛々とあぶり出される京都の歴史は興味深い。