本日の1枚 やくしまるえつこ

 やくしまるえつこ / RADIO ONSEN EUTOPIA (CD+CT)

RADIO ONSEN EUTOPIA(特別限定盤) (ALBUM+カセット)

RADIO ONSEN EUTOPIA(特別限定盤) (ALBUM+カセット)

 
 昨年12月25日にNHK-FMで放送された「みんなのクリスマスセッション」で演奏された曲たちがアルバム化されました。参加ミュージシャンは、相対性理論のメンバーのほか、大友良英、itoken、エマーソン北村など。
 一発録りのセッションとは信じられぬクオリティのバンド・サウンドは、凝ったアレンジのスタジオ録音による既発のシングル作品と比べても、また違った味わいと奥行き、そして勢いの魅力が際立ちます。
 
 とりあえず冒頭の『ノルニル』のバンド・サウンドぶりに参りました。
 『ヴィーナスとジーザス』や『ヤミヤミ』など、ヴァイブやフルートの音色のせいもありましょうが、爽やかな相対性理論といった印象。
 メロウさそのままな『ときめきハッカー』や、ぐんぐん高揚感が増す『ロンリープラネット』を聴いても、7月発売予定の相対性理論の新譜が楽しみでなりません。
 やくしまるえつこ楽曲での白眉は『COSMOS vs ALIEN』。イントロのオルガンと早口ヴォーカルの駆け足なグルーヴィさから、2トーンなリズムと、歌声にあわせてコロコロ変わる曲調の妙に恐れ入る。ラストでは浮遊系フュージョンな演奏まで、凄まじいセッションであります。
 
 また、NHKみんなのうた」のカヴァー曲も素晴らしい。
 谷山浩子『恋するニワトリ』のサビの歌声のキュートさに胸キュンで、清涼なフルートの音色も好し。シンプルに歌う『北風小僧の寒太郎』、静謐にエレクトロニカ風の『キャベツUFO』も好し。
 戸川純も歌ってた『ラジャ・マハラジャー』は、80年代の日本のインディ・バンドなパンキッシュさがまた素敵であります。
 ちょいとトイ・ポップ風な『メトロポリタン美術館』もキュートさがたまんない。
 
 そして、限定盤には、カセットテープ「幻のエアチェックテープ」も同梱。やくしまるえつこDJの90分番組を収録、謎なトークもキュートでたまんないよ。
 
 
 ロンリープラネット
 

ここ数日で読んだ4冊

 「やりたいことは二度寝だけ」

やりたいことは二度寝だけ

やりたいことは二度寝だけ

 会社員&小説家の津村記久子さんのエッセイ。日常をダラダラと書き連ねるユルさが好い。無理のある奇矯な視点などなく、ほんのわずかにズレた着眼点に共感を抱く。モリッシーの言葉とドラクエを比較したりとか。
 「ピッチャーびびってるヘイヘイヘイ」とオフィシャルに歌いたいがために野球をやりたいとすら思う、という一文に参った。
 
 「遠乃物語」
遠乃物語

遠乃物語

 遠野から「遠乃」へ迷い込んだ、台湾帰りの民俗学者と地元の学生。パラレルワールドで発生する様々な怪異は、現実世界の昔語りと呼応する。
 ホラーよりもSF色が強いが、不安定な世界観が発する違和感がじわじわと覆ってくるような感覚がお見事。
 
 「ギッちょん」
ギッちょん

ギッちょん

 時系列と空間にとらわれない流れにまずは戸惑う。普通に切なく、痛々しく、あるいは微笑ましい断片たちが、実験的であることすら拒むような変貌を遂げ続ける。
 久々に読んだこのような方法論の小説は、正直ちょっと苦手だ。
 
 「モナ・リザの背中」
モナ・リザの背中

モナ・リザの背中

 絵の中に迷い込んでしまう「先生」の冒険譚。現実と絵の世界を行き来する先生と、その弟子「アノウエ君」との問答が素敵すぎる。
 名画の中を彷徨っているかと思えば、気付けば現実世界でマグロの解体ショー。そんなスラップスティックな展開を、ユルいけれど哲学的な会話がグッと抑える。読後感も好し。
 

本日の1枚 naomi & goro

 naomi & goro / Cafe Bleu Solid Bond (CD)

CAFE BLEU SOLID BOND

CAFE BLEU SOLID BOND

 
 ナオミ&ゴロー10枚目のアルバムは、なんと、スタイル・カウンシルのファースト・アルバム「Cafe Bleu」を丸ごと1枚カヴァー。いやぁ、思い切ったことしますねぇ。
 とりあえず1曲目の『Mick's Blessings』、バイクのエンジン音を背景にスリリングなアコギの演奏が素敵。
 続く『The Whole Point Of No Return』は、歌声も穏やかなボッサ。
 こんな感じでインスト or 歌ものなボッサに料理してくのかと思いきや、以降はジャズやソウルなテイストの曲もあり、そのへんの感覚も含め、成る程、こりゃ確かに「Cefe Bleu」であります。
 
 スパイ・ジャズ風なサウンドに「おぉぉ」てコーラスの『Me Ship Came In!』は、コーデュロイの『Something In My Eyes』みたいだ。
 なんだか渋谷系な『Headstart For Happiness』、ファンキーなトラックに歌声はキュートな『Strength Of Your Nature』とか、ポップな曲も好し。
 ラップな語りの『A Gospel』も、日だまりぽかぽかな感じの『Here's One That Got Away』も好し。
 でもやっぱ、シンプルに歌声とアコギを聴かせる『The Whole Point Of No Return』や、ラストの『English Rose』(これはJamの曲)に惹かれました。
 次作はオリジナル・アルバムを期待します。
  
 
 The Whole Point Of No Return
 

ここ数日で読んだ4冊

 「ヘタウマ文化論」

ヘタウマ文化論 (岩波新書)

ヘタウマ文化論 (岩波新書)

 日本文化を席巻するヘタウマ現象を嘆きつつも、ヘタウマのキーマンを振り返りながら懐かしげに語る。あまり「文化」を論じてはいないけど、タモリの分析なんか面白くって好し。
 しかし、巷に溢れるヘタウマへの批判から始まるも、気付けばヘタウマの素敵さを語ってて、結局何が言いたかったの、という読後感が残る。
 
 「幻想怪奇短篇集」
澁澤龍彦訳 幻想怪奇短篇集 (河出文庫)

澁澤龍彦訳 幻想怪奇短篇集 (河出文庫)

 フランス幻想小説な短編集、というよりも澁澤龍彦が訳した作品集という感があり。幽霊ものなど怪奇ホラー中心のセレクションながら、どこか小洒落たブラック・ユーモアが好いね。
 目玉はトロワイヤ「共同墓地 - ふらんす怪談」全編が収録されてること。特に「恋のカメレオン」とか、オチが見えててもそこに至るまでの諧謔さが絶妙です。
 
 「スピンク合財帖」
スピンク合財帖

スピンク合財帖

 犬視点で町田家の日常を語る、スピンク日記の続編。犬、可愛いし、主人ポチの奇矯な生き様も面白すぎる。
 
 「謎解きはディナーのあとで 3」
謎解きはディナーのあとで 3

謎解きはディナーのあとで 3

 ミステリとしてはまぁアレなんだけど、しかしまぁキャラたちの会話部分の面白さで最後まで読ませます。
 

本日の1枚 Sweet Voices

 V.A / Sweet Voices -Fairy Girlfriends- (CD)

SWEET VOICES -FAIRY GIRLFRIENDS-

SWEET VOICES -FAIRY GIRLFRIENDS-

 
 ミナクマリ、という名前をどこかで見たのはどこだったっけ、とアルバム「Rang」を購入した今年の頭からずっと引っかかったんだけど、2010年にリリースされたこのコンピに収録されていたことを思い出した。
 収録されているのは、原田郁子コトリンゴ土岐麻子羊毛とおはな空気公団原田知世advantage Lucy湯川潮音などなど16曲。
 嶺川貴子の『MIMI』(1995年)からMinuano『海を渡る鳥』(2010年)まで、思い切り僕の大好きな女性アーティストばかり収録されているのでGETしたものの、すでに持ってる曲が多いので全然聴いてなかったのであります。
 
 件のミナクマリ『Relish』は、シタールやタブラの音色が耳に残るけど、浮遊系エレクトロニカ・ポップなアレンジがとても心地良い。シルキーだけどちょっとクセのある歌声も好し。これはファースト・アルバムからの曲だそうで、そっちも聴いてみようか。
 あと、カルネイロ『翡翠の羽』も憶えてないけど結構好いな。ブラジリアン・フリーソウルなテイストの爽やかアッパーな曲で、適度に力強い歌声と、青春っぽい適度な高揚感が好し。 
 
 
 

本日の1枚 Predawn

 Predawn / A Golden Wheel (CD)

A Golden Wheel

A Golden Wheel

 
 約3年前にリリースされたミニアルバムが衝撃的だった Predawn。アコギと歌声のシンプルな楽曲でありながら、英国フォーキーな「森の奥」感と UKロック的なグルーヴ感、オールドタイミーな音とエレクトロニカ以降な感性などなど、さりげなく漂うそれらの手触りにキュンときてました。
 そしてついに待望のファースト・フルアルバム。期待どおりに素敵なアルバムです。
 やはりアコギを中心にしたシンプルなサウンドなれど、録音手法はかなり拘ったことが感じられる質感。様々な楽器を何気に配したアレンジも素晴らしい。
 
 とりあえずは冒頭の『JPS』。アナログなぶちぶちノイズで始めるこの曲、確かに耳への感触は懐かしい。いろんな音を配しながらもあくまでもシンプルなアレンジで、微妙なグルーヴィさを湛えた歌声にやはりキュンとね。
 決して細くはないけど儚く、ドリーミーで、愛らしい歌声の魅力にいきなり参りました。
 続く『Keep Silence』は、静かなアコギの音色が発するグルーヴィさも好いし、キュートなコーラスをそっと重ねるアレンジも素敵。
 ちなみに『JPS』はサルトルを歌った曲で、『Keep Silence』は「語りえぬものについては沈黙しなければならない」だと。
 
 淡い煌めきな情感の『Tunnel Light』、なぜかエレクトロニカ・ポップなオープニングの『Breakwaters』、ちょっぴり脱力なネオアコ風の『Free Ride』と、さらに続く楽曲もどれも文句無しに素敵。
 お気に入りは『JPS』と『Keep Silence』の2曲なんですけど。
 ラストにはシークレット・トラックとして日本語詞の曲も。これはこれで好いんだけど、英語の響きの方が歌声と世界観に合ってるかな。
 
 
 Keep Silence