本日の1枚 Mark Stewart

 Mark Stewart / Mark Stewart (CD)

Mark Stewart

Mark Stewart

 
 元ポップ・グループマーク・スチュワート、1987年リリースの3枚目のアルバムです。プロデュースはエイドリアン・シャーウッドで、攻撃的なダブ・サウンドを聴かせます。「スドドド」って重いビートが直撃する。
 そして、絶望をこめて絞り出されるマーク・スチュワートの歌声(ラップ)もまたじわじわと猛威を振るう。
 
 しかしこのアルバムでのポイントは、コラージュされる様々なポップ・ミュージックの断片でありましょう。
 冒頭の『Survival』ではシック『Good Times』のベース・ラインが使われ、続く『Survivalist』ではシェリル・リン『Got To Be Real』のイントロのホーンがサンプリングされます。「サバイバル、サバイバル」てラップはグランドマスター・フラッシュの引用ですが、しかしこのラップのドス黒さは何だろう。
 ディスコなネタでは、ドナ・サマー『I Feel Love』のリズムを使った『Fatal Attraction』が凄い。そのリズムはボディ・ビートに変質され、そこにマイケル・ジャクソン『スリラー』の笑い声がサンプリングされている。
 ポップ・ミュージックに向けられる容赦ない批判の眼差しは、もはや冗談の域に達しています。
 面白いところでは、坂本龍一『戦メリ』をネタにした『Forbidden Colour』も好いな。
 
 アルバムの白眉は、やはりサティ『ジムノペティ』を使用した『Stranger』でしょう。
 3拍子の曲を4つ打ちのリズムに乗せるのはムチャであるが、ズドドドしているがシンプルなヒップホップ・トラック上で、アンビエントなテイストが泣かせます。
 そして、情けなく絞り出されるマーク・スチュワートの歌声もまた泣かせます。切なく「愛」を歌っているのですよ。
 
 
 Stranger Than Love
 
 
 Survival / Survivalist