本日の1枚 Jennifer Warnes

 Jennifer Warnes / Jennifer (CD)

ジェニファー

ジェニファー

 
 米国の女性SSW、ジェニファー・ウォーンズ。といえば、「愛と青春の旅立ち」や「栄光の彼方に」の主題歌を歌った人、という印象が強いですね。正直言うと、それしか知らなかった。
 しかし、新・名盤探検隊シリーズで廉価再発された、1972年リリースのこのアルバムを試聴したとき、その印象は吹き飛びました。
 ジャクソン・ブラウンジョン・ケイル、ラス・カンケル、ニック・デカロ、ロン・エリオットなどが参加したサウンドは、穏やかなグルーヴ感に溢れていて、フリーソウル的な味わいもあります。
 
 冒頭の『In The Morning』はビー・ジーズの曲ですが、「小さな恋のメロディ」なイメージはそのままに、朝に相応しいグルーヴィさがじんわり響きます。
 ジミー・ウェッブ『P.F. Sloan』のカヴァーも、同様に朝なグルーヴィさを感じたり。あのサビ部分を気品たっぷりに歌う彼女の声にグッときました。ま子供コーラスもまた好し。
 いきなりグニャグニャしたサイケさの『Sand And Foam』(ドノヴァンのカヴァー)や、流麗な『These Days』(ジャクソン・ブラウン)、ホーリーに重厚なアレンジの『Magdalene』(プロコル・ハルム)など、ややヒネリを利かせたアレンジが面白い。
 
 お気に入りは、メロウ&グルーヴィな『Empty Bottles』と『Needle And Thread』。
 前者はジョン・ケイルの作品で、ミニマルなリズムとエレピの柔らかなアシッド感がたまりません。
 後者は軽やかなポップ・ソウルという趣で、これもエレピの音色が素敵です。
 
 
 Empty Bottles
 

ここ数日で読んだ3冊

 「tokyo404」

tokyo404

tokyo404

 非定住をテーマにした短編集。ルームシェアを始めたが住人たちは変人ばかりで、というドタバタ劇場な1つ目で油断したら、2つ目の話は家出少女たちの秘密結社へのインタビューでゾクリとする展開。さらに不可思議な体験と都会の日常が交錯していき、いつの間にか都市論が語られる。
 思考の断片がぼんやりと余韻を残す読後感がまた好い。
 
 「クロコディル」
クロコディル―一八世紀パリを襲った鰐の怪物

クロコディル―一八世紀パリを襲った鰐の怪物

 18世紀フランスの神秘思想家が著した珍奇な作品。暴徒を操りパリの街を襲う巨大なワニの怪物と、相対する神秘学者たちとの戦いを描く。
 啓蒙主義を揶揄した語り口はやたらと難解ではあるが、基本的にはバカっぽいSFとして読めたりします。
 
 「デザインあ 解散!」
デザインあ 解散!

デザインあ 解散!

 NHK Eテレデザインあ」のコーナーを絵本化。ラーメンや電卓などが次々と解散(部品化)していく様子をコマ撮りにしています。やはり動画ほどの衝撃はないものの、一切の説明無しに淡々と写し出される珍奇な味わいが素晴らしい。
 無機質なのに温かみのある1枚1枚。ページをめくるたびにフッと頬が緩みます。
 
 
 

本日の1枚 Jackson Sisters

 Jackson Sisters / Jackson Sisters (CD)

ジャクソン・シスターズ

ジャクソン・シスターズ

 
 1980年代の終わりぐらいに、英国の URBANレーベル から、ジャクソン・シスターズのシングル「ミラクルズ」が再発された。ジャクソン・シスターズって名前なんだから、てっきりマイケルの姉妹たちのグループだと思ってた。もちろんメンバーはジャネットやラトーヤたち。
 ところが、1976年にリリースされたこのアルバムが再発されたとき、その解説を読んでビックリ。なんと、ジャクソン兄弟とは何の関係もない、ぱちもんなグループだったのであります。
 
 ジャクソン5の人気に便乗した、全くのぱちもんグループ。しかし、その音楽を手掛けたのはジョニー・ブリストルで、あくまでもジャクソン5風でありながら、芯はグルーヴィなポップ・ソウルな楽曲はどれも素晴らしい。
 ガール・ポップ風だけどグルーヴィな『Where Your Love Is Gone』、メロウな『Day In The Blue』、バブルガム風な『Boy, You're Dynamite』、アレサ・フランクリンのカヴァー『Rock Steady』はしっかりファンキー、と佳曲揃い。
 
 白眉はやっぱり『Miracles』。イントロのリズムの取り方のカッコ良さから参ってしまいますが、キャッチーなメロディも、音のグルーヴィさもポップさも、まさにミラクルな逸品。
 ジャケのイメージどおりにダンス・クラシックな名曲ですが、メイン・ヴォーカルの歌い方がマイケルっぽいのもまた御愛嬌であります。
 
 
 Miracles
 

ここ数日で読んだ3冊

 「ニッポン・ポップス・クロニクル」

 牧村憲一が自分史を語ることで日本のポップ史を語る。アーティストたちのエピソードや音楽業界の内幕なども興味深いが、そんなことよりも、自分の好きな音楽たちが、この本を読むことで繋がっていくような気がした。
 
 「少女は黄昏に住む」
少女は黄昏に住む (マコトとコトノの事件簿)

少女は黄昏に住む (マコトとコトノの事件簿)

 童顔刑事とオタク女子高生なミステリ短編集。その思い切りなキャラ設定を活かしたストーリー展開が意外に上手いという印象。さらに意外なことに、謎解き部分が結構本格的なのだ。
 キャラ会話の掛け合いもやり過ぎ感はあるものの普通に面白いしね。
 
 「桃仙人」 深沢七郎とのつきあいを小説仕立てで回想。些細なことで懇意な間柄の人を斬り捨てる偏狭な作家への敬愛心と、いつ自分も斬られるかとビクビク過ごす恐怖感が、様々な興味深いエピソードとともに綴られる。
 まぁしかし、深沢七郎の破天荒な生き様に惹かれる気持ちも、斬られる不安がやがて現実となったときのフッと抜ける思いも共感できるが、それはまるで青臭い「恋」である。
 

本日の1枚 Jackson 5

 Jackson 5 / Third Album (CD)

Third Album

Third Album

 
 なんとなく、今日はジャクソン5を聴く。『明日に架ける橋』のカヴァーを含む、1970年リリースのサード・アルバムです。
 キッズ・ソウルの名盤てな記憶があったのですが、久々に聴いてみると、なんかファンキー・ロックな印象が強い。あれ、こんなんだったっけ。
 
 とりあえず名曲『I'll Be There』でスタート。所謂ところのモータウンサウンドなんだけど、かなりソフト・ロッキンなアレンジですね。穏やかに甘い。
 しかしベースはグルーヴィで、デヴィッド・T・ウォーカーのギターも光ります。そう、ジャクソン5といえば、実はデヴィッド・Tのプレイが随所に光ってる曲が多いんですよねぇ。
 
 さて、メロウ・キッズ・ソウル名曲と名高い『Ready Or Not』もファンキー・ロックなテイストを感じるし、『Mama's Pearl』も同様。
 『How Funky Is Your Chicken』なんて、GS歌謡な味わいもあります。
 
 爽やかなグルーヴ感の『Oh How Happy』とか、伸びやかな歌声と音がじんわりグルーヴィに響く『Darling Dear』あたりが好き。
 久々に聴いてのお気に入りは、イントロからサイケな『Can I See You In The Morning』。曲調もちょいとサイケ・ポップな味わいがあり、うーむ、こんな曲あったっけ。
  
 
 I'll Be There
 

本日の1枚 坂本真綾

 坂本真綾 / シンガーソングライター (CD)

シンガーソングライター

シンガーソングライター

 
 ここ数年の坂本真綾作品を聴くときは、自分が好きだったのは菅野よう子と組んだ坂本真綾である、という思い込みに捕われながら、あぁまぁそうでもないや、と思い直すことを繰り返しているような気がします。
 8枚目のアルバムとなるこの新作は、タイトルどおり、全曲作詞作曲を自身で手掛けているそうです。
 正直な感想は、まぁ結構いいよね、という感じであります。
 シンプルなメロディに意外や才能を感じたりしましたが、そのシンプルさから彼女の声質の魅力を引き出しているのは、アレンジのセンスに依るところが大きいような気もする。ちなみにアレンジャーは河野伸渡辺善太郎だと。
 
 冒頭の『遠く』は、ありきたりに思えたメロディが、ふっとサビに入るところで印象が変わる。オーケストレーションも上手い。
 しかし、くにゃっとした浮遊感の『誓い (ssw edition)』、なぜかエレクトロニカ系なイントロの『僕の半分』とか、微妙に物足りない曲がもどかしい。
 逆に『ニコラ』は、もっとシンプルなほうが好い、とか。なんというか、あと1歩で大好きになりそう曲が多いのだ。
 
 ちなみに、何気にニュー・ウェーヴ感な『サンシャイン』と、ファニーにリズムを刻むピアノとメランコリックさ&ウキウキさが素敵な『シンガーソングライター』がお気に入りです。
 
 
 ニコラ
 

本日の1本(メモ) リンカーン/秘密の書

 
・名作「ヴァンパイアハンターリンカーン」が映画化。テンポの良さがいいんだけど、原作読んでないとストーリー展開についていくのがしんどそう。
リンカーンに係る実話とヴァンパイアとの戦いを巧く絡めた要素が原作の妙であったが、それがちょとわかりづらいのが特にね。
・ヴァンパイアと戦うリンカーン、と聞いて想像されるようなバカっぽさはない。
・監督はティムール・ベクマンベトフ、製作はティム・バートン。世界観も素晴らしい。
・舞踏会でのヴァンパイア群との戦いとか、斧アクションもカッコ良すぎる。
・しかし、最後の戦いは呆気なく終わっちゃって残念。
・ヘンリー役のドミニク・クーパー(特に顔)がマンガっぽくて好い。
・首ちょんぱファンとしても満足。
・近所のツタヤに大量に置いてあったが、全然借りられていなかった。